物心が付いたときから、富野由悠季作品を見て育ったので「富野節」と呼ばれる独特な台詞回しや演出には「実家のような安心感」を覚えます。近年のアニメの土台を作った方で、新たな試みに挑戦し続けています。作風は暗くバットエンドが多いです。最終回に全員殺してしまうことから「皆殺しの富野」と呼ばれ、精神的に病んでいる前期は「黒富野」、復帰し明るい作品中心の後期は「白富野」と呼ばれます。スポンサーに媚びず視聴率やプラモの売り上げは悪いが、10年後に評価される事が多いのが特徴。新人発掘や育成に力を入れている。アニメ声を嫌い舞台俳優から発掘し演劇風に演じさせるのが特徴。総集編・繋ぎ合わせの名人と呼ばれ、OPの完成度にも定評がある。
※ ネタバレあり
伝説巨神イデオン | ||||||||||||||||||||
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テレビシリーズ 1980年-1981年- 原作・監督 富野喜幸 /全39話
□ 人間臭い作品 富野作品最高傑作 メカを発掘し戦うアニメは「オーガス02 」が元祖だと思っていましたが、「イデオン」の方が先でしたね。戦争物や富野作品では珍しく軍隊と民間人の隔たりが無く最初から団結しています。翻訳機や重機動メカ、亜空間戦闘など未来的想像力が詰め込まれた本当のSF作品となっています。最近のロボットアニメはSF要素は無いに等しいので「イデオン」は童心に戻れました。 イデオンは黒富野全開で暗いと聞きましたが、TV版はそうではありません。構成が綿密に練られており面白い。各話戦闘があり常に戦っているがストーリーは着実に進んでいく。この頃のロボットアニメは、敵の攻撃から街や基地を守り続け1話と最終話以外ストーリーが進まない作品が多く、「イデオン」は小説を読んでいる感じで新たな方向性を感じました。 惜しいのは前半は専用武器が無く殴ってばかりで爽快感が無く、突然の回想シーンから「イデオン・ガン」が登場し、直後に「イデオンソード」の登場とスポンサーからのお達しを感じる場面があった。22話で突然1話が始まり、おかしいなと思い「wikipedia」を確認すると「総集編」でした。 前作ガンダム要素も 命令違反で懲罰房、塩が足りないので水の惑星で補充と前作ガンダムに近い展開が見受けられる。保育所では度々ハロが出て来ます。 女性陣の性格が悪い 富野監督は女嫌いなのか性格の悪い女性が多く登場する。「イデオン」は特に酷い。敵側の総司令の娘「カララ」の身勝手な行動で戦争勃発。これにより「バッフ・クラン」は振り回され「カララ様救出作戦」などで敵味方多くの命が失われる。「カララ」を慕っていた侍女「マヤヤ」も無駄死にさせてしまう。 一番身勝手なのが遺跡発掘隊の言語学者「シェリル」で、常にヒステリーを起こし唯一の士官「ベス」と対立を繰り返し、異星人「カララ」を目の敵にし幼い子供に当たり散らす。「イデ」の研究のため何度も味方を裏切ろうとする。 幼馴染みの「カーシャ」は勝ち気で、命令違反を繰り返し何度も味方を危機に晒す。男勝りで敵は皆殺しにという危険思考。「ロッタ」も突然「カララ」を暗殺しようと銃を撃つが失敗。次週から何事も無かったように居る。 差別的な主人公達 敵は戦闘を回避しようと偵察し「カララ」の身勝手な行動で戦闘へと発展と悪意はありませんでした。序盤は主人公側が悪役で共感できません。「カララ」を異星人と言うだけで差別し、前半は何かトラブルがある度に「カララ」が犯人に違いないと濡れ衣を着せられ毎回迫害されます。「カララ」が正しいと証明され仲間の一員となるが、再びトラブルが起き疑われるの繰り返しで飽きてきます。 特に「シェリル」と「カーシャ」が憎悪を持って接触し主人公側が悪に感じます。これでは敵側と変わりません。「イデが発動」する訳です。 「カララ」と「カララ」を信じる「ベス」が主人公という印象。 □ ベスとカララの物語 言葉だけのサムライ 敵は「サムライ」という口癖があるが、以下を繰り返す小物集団。 卑怯な方法で先に手を出す→負けを認めない→人のせいにする→逃げる→再戦→潔く特攻 将校は爆発する瞬間に脱出し「ザブングル 」並みにしぶとい。 特にライバル「ギジェ」は、自ら申し込んだ「ベス」との決闘に負けたにも関わらず、言い訳をし約束を破り逃げ出し小物臭が凄い。 失敗を切り返し(カララ) → アバデデ → ハルル → ダラム の下を渡り歩く。軍を左遷され拾って貰った私設軍隊を率いる「ダラム」にも見放され、敵陣の月面に置き去りにされる。最後は「ソロシップ」の捕虜となる。常に下っ端で敬語を使っており、息抜きできず可哀想になってきた。「ギジェ」は生真面目すぎるとの事。 ベスに共感を覚える 主人公の「コスモ」は前半は影が薄く嫌みを一言発するだけです。「ベス」は唯一の士官で「Bメカ」の操作や「ソロシップ」の艦長と作戦指令もこなしてしまう天才。「ギジェ」との決闘でも勝利し格闘能力も高い。大人視点で見ると「ベス」に共感を覚える。唯一恋人と結ばれたキャラで実質主人公。 □ ギジェとの共闘が熱かった 主人公クラスが不足 艦長に適任の「ベス」がBメカ担当のため「ソロシップ」の艦長が存在せずキャラ不足を感じる。「ベス」が自分で降り艦長へ就任し名前も顔も分からない脇役「モエラ」がBメカを操縦した。主人公格は「コスモ」「ベス」「カーシャ」「シェリル」の4人で「シェリル」は学者なので除外すると、明らかに戦闘キャラ不足です。 恋人=志望フラグ 突然看護兵が「ラポー」が登場し「モエラ」と恋仲になる。イデオンは「コスモ」→「キッチン」や「シェリル」→「コルボック」、と新キャラに心寄せると死亡フラグである。これは「ギジェ」がBメカに搭乗する前触れだと歓喜。 ギジェが熱い 30話のラストで捕虜となったライバル「ギジェ」が駆けつける。核爆弾を着込み「コスモ」と決闘する「ダラム」の頭をライフルで撃ち抜き助けるシーンは熱い。例えるなら宇宙船ヤマトでデスラーが助けに来る展開です。31話の「ギジェ」による人質救出作戦も熱く、「ギジェ」は身体能力と判断能力が高く騎士である。ラストで「ベス」が両親と生き別れるシーンに感動。 これでは「ベス」がBメカに搭乗してしまうので、高熱でダウンさせライバル「ギジェ」と共闘するという熱い展開。チート性能の「ソロシップ」を散々苦しめた手腕は確かで「ギジェ」は操縦能力も天才的でした。富野作品でライバルが仲間に入るのが珍しいですね。仲間フラグが立っても死亡したり即裏切ります。「クワトロ」は作品を跨いでいますし、逆シャアで再び敵になります。「ギジェ」だけかも知れないですね。 「ギジェ」は目的の「イデの発動」を見るまでは死なないと安心していましたが、「イデソード」の惑星割りを見て脱退と予想外でした。敵の将校と「貴様はベス!!」的な熱い戦いと「ハルル」討伐を期待していたのですが残念です。もっと長く活躍を見たかった。 ルウは伝説の巨人が転生した赤子だと予想していたが 1話で「コスモ」の父親と「ルウ」の母親が密かに亡くなっています。爆風のシーンはあるが、直接的な死亡シーンや対面シーンが無いあっさりした物になっており富野作品の特徴とのこと。 1話初頭に「ルウ」の機嫌が悪く「バッフ・クラン」の襲来か「イデオン」の存在に気が付いている描写があり、「カララ」救出部隊が「ソロシップ」で子供達を撃ったときに「ルウ」がバリアを貼った描写から「ルウ」に何かしらの力が宿っている事を表現していました。 「ルウ」が麻疹となり「イデ」のゲージが安定しなくなった描写で気が付きました。もしかして「ルウ」が伝説の巨人では?赤ん坊が体内に居る時に、神様が転生する話は良くあります。その為に邪魔な母親の存在を1話の冒頭で殺したのか? 実際は純粋な防衛本能に反応しているだけと微妙な物でしたが。 絶滅エンドは既定路線 □ 受け継がれたシーン |
伝説巨神イデオン 劇場版 発動篇 | ||||||||||||||||||||
「伝説巨神イデオン」劇場版 Blu-ray
劇場版 1982年- 監督 富野喜幸(総監督) 滝沢敏文 |
戦闘メカ ザブングル | |||||||||||||||||||||
「戦闘メカ ザブングル」 DVD-BOX PART-1 「戦闘メカ ザブングル」 DVD-BOX PART-2
テレビシリーズ 1982年-1983年- 原作・監督 富野由悠季 /全50話 (視聴回数/1回) 人を殺さない契約 ザブングルが「Gのレコンギスタ」に似ているとの事で、世界観を楽しむため見る事に致しました。子供の頃見ていましたが、覚えているのは荒野と「アイアン・ギアー」のみで、超合金に憧れた想い出があります。事前情報で知っていたのが、スポンサーから条件として人を殺さないように指示されたコメディ作品という事です。「皆殺しの富野」と異名を持つ富野作品では異色を放つ作風です。 「惑星ゾラ」は西部開拓時代の文化レベルですが、「イノセント」と呼ばれ神と崇められる謎の民族が裏で糸を引き、「ウォーカーマシン」と呼ばれる文化レベルには合わない最先端ロボットを与え紛争を起こさせている、と「Gレコ」と世界観は似てます。「Gのレコンギスタ」も「トワサンガ」と呼ばれる謎の民族から「フォトン・バッテリー」を提供され、「ヘルメスの薔薇の設計図」からMSを生産しています。
常識に囚われない主人公 ザブングルの特徴は、主人公「ジロン」が不細工で「どマンジュウ」と呼ばれています。最も格好悪いヒーローとの事。そして常識に囚われない主人公。これも「Gのレコンギスタ」の「ベルリ」に似ていますね。「惑星ゾラ」は「三日の掟」という規律があり、どの様な重罪でも三日逃げれば冤罪となります。恐ろしいのが三日経てばどんな憎悪でも消失することです。ヒロイン「エルチ」は親を殺されても何も感じ無い違和感のある世界です。同様に親を殺された「ジロン」は、この世界の常識に違和感を持ち1週間経っても親の敵を追っています。その事により仲間から笑われ軽蔑され孤独に戦っています。 最後は英雄となりますが、中盤は心まで不細工になります。自分勝手で仲間に迷惑をかけ、見捨てられたヒロインを説得し連れ戻した後は相手にせず(釣った魚に餌をやらず)、「ラグ」には2度も暴力を振るいます。 コメディ作品 「ウォーカーマシン」は兵器では無く採掘マシーンです。燃料は「ガソリン」、操作は「ハンドル」と斬新なアイディア。補給や燃料の概念が強く無駄弾を使えない為に基本武器は使わず格闘戦となります。人を殺さないことが条件なので、敵が脱出した後に破壊。味方は不殺しを貫いていますが、敵同士で殺すことはあり他の富野作品と変わらず無意味に人は死んでいきます。 スパロボで有名な「ICMB投げ」や、核ミサイルを食らってもドリフのコントの様に灰色になって無事です。親の敵でライバル「ティンプ」は、ルパン三世の「次元」を彷彿させるギャグキャラです。登場すると必ず葉巻を足に落としたり飲み込んだりし火傷します。 最終回近くになると投げ槍になり、キャラクタ達が話数が少ない事を嘆き出す。「ZZガンダム」の「アニメじゃない」は有名ですが、逆に最終回に「漫画だからね」とメタ発言と共に飛ぶ地上移動艦「アイアン・ギアー」。 ヒロインが可愛い ザブングルの特徴はヒロイン勢が可愛いと言う事。富野作品で一番かも知れません。メインヒロインは「エルチ」と「ラグ」の2名で「エルガエム」や「ダンバイン」タイプ。「ジロン」はどっち付かずなのが、Gレコの「アイーダ」「ノレド」「ラライア」達の状況と似ている。そのハッキリしない態度に不満を募らせ、両者とも船出をし他の男と恋をするが、心移りした相手は必ず殺されるという酷さ。私は「ラグ」派です。 後半になるとガンダムに出て来そうな「マリア」と「ビリン」が加わります。前者は「ララァ」、後者は「ミハル」タイプ。4人とも可愛いです。舞台が荒野の南米風なので、上半身裸になる事が日常で羞恥心が無いらしく胸出しシーンが多いです。「エルチ」は風呂で洗脳されるシーンや洗脳中の悪夢の中、全裸で魔物に追いかけられるシーンなどがあります。他にも新ヒロインを臭わせるキャラは出ますが1話で死にます。 最後に出てしまった黒富野 後半は「ファットマン」押しで主人公の影が薄くなり「エルチ」を取られた形となります。28話に誘拐されから、毎週主人公が探し求めている姿を見せられた視聴者は何だったのかす。親の敵「ティンプ」とも未決着のままです。続編があるなら別ですが、コメディ作品とは言えスッキリ終わって欲しかった。 最終回に前振りも無く核ミサイルの爆風で光を失ったメインヒロインの「エルチ」。「カテジナ」さんの様に罪を犯した訳ではなく唐突な失明。富野監督はヒロインを不幸にしたりバットエンドにしないと気が済まないようです。納得のいかない終わり方でした。(記載:2015年1月20日) |
ザブングル グラフィティ | ||||||||||||||||||||
ザブングル グラフィティ
劇場版 1983年 - 原作・監督 富野由悠季 (視聴回数/1回) ハッピーエンドに変更 富野作品に多く見受けられるTVシリーズの総集編映画。富野監督は総集編を作るのが上手いことで知られるが、この作品は微妙。総集編では無く名シーンの詰め合わせに近く本編を見ていることが前提です。新作カットは少なく、気が付いたのは「エルチ」と「ジロン」の対面シーンは時間が無く色が塗ってない(というギャグ)。場面切り替えで「チル」が立て札を持っているシーン。 見所はラストに新作カットが追加され、TVでは死亡した「アーサー・ランク」が生還、失明した「エルチ」の治療を示唆しハッピーエンドに書き換えられている所だけです。 |